犬はかすがい


 主人の転勤を機に、主人の両親と同居することになった。
大阪とはまるで正反対の、小さな山間の町。
熊が出るから、金属のバケツをたたきながら歩けと言うくらい山奥の村に。
クッキーやキャンディには、夢のような大自然。
ところが、熊さえいるこの辺りには
山から来た動物たちが運んでくる、悪いダニがいる。
以前ひどい目にあったので、もうこりごり。
このダニの事件は、またの話にしよう。

 同居するにあたり、家を建て替えることになった。
設計者は私。
田舎で、年寄りがいても暮らしやすいように。
明るくて日当たりがよく、家相も考えて。
実際より大きく見えるように。
手すりもしっかりと。
それからしっかり、クッキーやキャンディも住みやすいように。

 冬はひなたぼっこが出来るように、サンルームを兼ねたテラス。
夏は涼めるようにウッドデッキ。
これは人間も犬も両方が嬉しい。
走り回れるように大きな芝生の庭。
これははっきり言って犬のためという方が大きい。
庭には安全なように高い囲い。
これは出ていかないようにと言うより
よその犬が入ってこないようにと言う意味で、高い囲いにした。
それから一番肝心なのは
戸を開けなくてもトイレに行けるようにと、ドアに猫だまし。

 建具屋さんに
「LDKから、廊下に出られるドアに、猫だましを付けてください。」と注文すると
「出ていったら入ってこられないようにしておけばいいんですか?」
いくら猫だましでも、それじゃもう2度とトイレには行きたくなくなってしまう。
いえいえ、何度も出たり入ったり出来るようにしてください。
でもこれを付けると、エアコンの効率が悪いですよ。
例えエアコンの効率が悪くても
すきま風が入って寒かろうとも
クッキーやキャンディのためなら我慢できる。
でもこれは、犬好きなら我慢も出来ると言うこと。

 動物の嫌いなお義母さんは
犬を家の中で飼うこと自体が気に入らない。
この辺りでは、犬を家の中で飼ってるところはないと言ってイヤな顔をする。
新居に住み始めた頃、お義母さんは、
クッキーやキャンディに向かって
「あんたらほど幸せな犬はおらんで、家の中で飼って貰って、ベッドで寝かせて貰って」
とよく言っていた。
それは、クッキーやキャンディに聞かせるわけではなく
間違いなく私に聞かせるために言っている。
これが嫁姑って奴だ。
結婚したばかりじゃあるまいし
自分のことなら我慢しても、クッキーやキャンディのためには強いですよ。

 キャンディは、私じゃないとダメって、何時も私のところに来る。
仕方なくクッキーはお義母さんのところに行く。
不思議なもので、一緒に暮らしていると、
お義母さんは結構この2匹をかわいがってくれる。
初めは私の見てるところじゃ仕方なくかなって思っていたが
犬はそうゆう人にはなつかない。

クッキーが甘えるものだから、悪い気はしないらしい。
「クッキーはお婆ちゃんっ子やね。」って言うと
お義母さんは「クッキーはおばあちゃんが好きなんやなぁ。」とでれでれ。
クッキーが私のところに来ると、キャンディはすねて横目で見てる。
そんな時は「おばあちゃん」の出番。
「キャンディ、お母さんはクッキーをだっこしとってやさかい、おばあちゃんで我慢しな。おいで。」
二人で一匹ずつだっこしてテレビを見る。
毎日の工房へは連れて行くが
遠くへ出掛けるときはお義母さんに預けて出掛ける。
お母さんに行ってらっしゃいするんやで、おばあちゃんとお留守番しような。」

 「お義母さん、クッキーとキャンディを好きになって下さって、有り難うございます。」
口に出しては言えませんが、感謝しています。
子はかすがいとは言うけれど、犬だって立派な「かすがい」です。


                                           2001年6月19日



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