48時間分のおしっこ


 クッキーは我が家に来るまで
家の中でトイレなんて想像もしなかったことに違いない。
と言うよりも、家の中でおしっこした日には
前足くわえさせられて、顎を思いっきりスリッパでたたき上げられたに違いない。
いくらトイレを用意して置いても
そんなところでおしっこする訳がない。
お散歩の時のクッキーのおしっこの臭いをつけてみたり
臭いのする薬を買ってきたり、色々と試してみたが全然だめ。
それでも殆ど毎日朝晩お散歩に連れて行っていたので、なんの障害もなかった。

 冬のはじめだったと思う。
凄い雨が降り続き、ちっともお散歩に行けなくなったときがあった。
レインコートもあったけれど、小さなクッキーには冬の雨は冷たすぎる。
「クッキー、今日はここでおしっこしてね。」
「?」
理解できないことを言うと首を傾げる。
ビクターの犬みたいに。

「あのね、今日はどうしてもお散歩に行けないの。」
しっぽを振る。
しまった、お散歩って言葉に反応してしまった。
「ごめんごめん、言っちゃいけなかったね。
う〜ん、とにかくトイレでおしっこしてね。誰も怒らないからね。」
こんな事、理解できたら苦労はしない。
でもおかしなもので、やっぱり犬に向かって一生懸命話してしまう。

 クッキーは夜になってもおしっこをしない。
私たちが寝てしまうとするかもしれないと、その日は早く寝ることにした。
朝、目が覚めて一番にトイレを見てみたがきれいなまんま。
どうしよう。
一昨日の夕方散歩に行ったきりだ。
「クッキー、誰も叱らないからね、お願いだからトイレでおしっこしてね。」
私はもう泣きそうな気持ちだった。
外は今日もひどい雨。
「そのうち我慢できなくなったらするだろう。」
主人はそう言うけれど、私は落ち着いてなんかいられない。
またしてはクッキーをトイレのところへ連れて行き
「ほら、ここでおしっこするのよ。」

 今から考えると、このときのクッキーはもうすでに、叱られている気分だったに違いない。
親心なんて子供からすれば、ほとんどが親のエゴと言うことになるようだ。
たまたまその日は主人の休みの日で
朝から二人してずっとクッキーのそばにいた。
私たちがおこたにあたっているとクッキーもおこたの中に入ったまま。
獣医さんに相談した方がいいかな。
こんな事してたら病気になってしまうかも。
お昼も過ぎて、夕方の診察に連れて行こうかと思っていたとき、
ふと思いついた。
クッキーが我が家にきた頃
ちょっとお留守番させると、すねて玄関に嫌がらせのウ○チをしてたことがあった。
2〜3回あった。
ドアを開けると嬉しそうにしっぽを、と言うか体中を振って迎えてくれる。
そして私がウ○チに気づくと
しっぽを丸めお尻を落としてすごすごとケージの中に入ってしまった。
そうだ、あれがいいわ。

主人と二人、出掛けることにしたのだ。
と言ってもすぐそこの喫茶店まで。
どれくらい待たせたらいいかなぁ。
もういいかなぁ。
あんまり早く帰っちゃだめだよね。
心配だなぁ。
喫茶店の隣のスーパーでお買い物したりで、どうにか1時間。
ドキドキしながら玄関を開ける。
ああ、そこには紛れもなく大きな湖!
「クッキーただいま、いい子だったね、いい子だったね。」
私はクッキーを抱きしめて、何回も何回も頭を撫でてやった。
私たちは、雨で足元がびしょびしょで冷たくなってるのも忘れて
クッキーをいっぱいいっぱい誉めてやりました。

                                           2001年1月19日



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