原っぱ


 家の近くにとても大きな原っぱがあった。
工場跡なのか大きくて金網のフェンスが張り巡らせてあった。
それは地域の小さな公園の隣にあったので、
子供たちの格好の遊び場。

 クッキーやキャンディも、もちろんこの原っぱが大好きだった。
子供たちが、幼稚園や小学校へ行ってる間で、
お母さんたちが小さい子供を連れて出てくるまでの時間。
この時間を狙って原っぱに行く。
原っぱではリードをはずしてやる。
待ちきれないように2匹は駆け出す。
いつもは、お母さんの取りっこでそっぽを向いてる2匹が、
こんな時は同じ方向に走っていく。
こんなに広いのに、
クッキーが行く方へキャンディが、キャンディが行く方にクッキーも。

 少し走ってふと振り返るのはクッキー。
私がいるのを確かめてるみたい。
キャンディはと言えば、全然気にしてないらしい。
クッキーが振り返ったとき、私が手で「帰っておいで」の合図をする。
クッキーは飛んで帰ってくる。
キャンディは、気が付いても「え〜〜〜。」という感じでじっとしてる。
私はクッキーの頭を撫でてやる。
「よーいどん」私の言葉にまたクッキーは走っていく。
キャンディは、「やっぱりな」って顔でまた遊びだす。

 おいでと言っても来ないキャンディのために、
クッキーとキャンディを3メーターくらいの紐で繋いでみた。
私が「おいで」と言うとクッキーは私の方へ一目散。
紐に引っ張られてキャンディも仕方なく。
ところが途中でキャンディが急ブレーキを掛けるとクッキーは「ぐっ!」
首が絞まるしむち打ちになりそうだ。
この作戦は失敗。

 ボール投げをすると、2匹で取り合うだけで私の所まで返しに来ない。
「ボール持っておいで」
聞いてない。
どっちかが取ると、もう決着は付いたとばかり、ボールはほったらかし。
仕方なく私が拾いに行く。

 草むらで姿が見えなくなると、急に心配になる。
そんな時に限って呼んでも帰ってこない。
何せとても大きな原っぱ。
向こうの方にはフェンスの金網に穴が開いてるところが数カ所。
もしかして。
私は原っぱを2匹の名前を呼びながら走り回る。
どこへ行っちゃったんだろう。
悪いことばかりが頭をよぎる。
あちこち探したけど見あたらない。
外へ出たんだ。
私は穴からは出られないし、飛び越えることも出来ない。
入り口の方へ引き返す。
入り口には、クッキーとキャンディが、どうしたの?って顔できょとんとして立っていた。
帰ってきてたんだ。
ふぅ。

 冬は陽だまりの原っぱ。
春は若草の原っぱ。
夏はまるでジャングルになってしまう原っぱ。
秋は、草の実いっぱいの原っぱ。

 ある年、大阪にも10センチの積雪。
(この時はまだキャンディはいない。)
私は大喜び。
クッキーも大喜び・・・・・のはず。
原っぱの入り口まで行くと、足跡も付いてない。
足跡も付いてない雪の原っぱを一番乗り。
私の方がワクワクした。

 いつものようにリードをはずしてやると、クッキーは嬉しそうに飛んで行く。
右へ行ったり左へ行ったり、ウサギのように跳ねてみたり。
でも、多分3分も経っていない。
クッキーが私のところへゆっくりと帰ってきた。
当たり前のように雪まみれ。
雪を払ってやろうとすると、クッキーの柔らかい毛にぴったりとくっついて取れない。
クッキーはガタガタ震えてる。
取ろうとすればするほど、雪はしっかりとくっついてしまう。
クッキーはとても大きく震えている。

 その時始めて気が付いた。
大変、この子は冬毛のない室内犬。
私は自分のコートを脱ぎ、クッキーをくるんで抱き上げると、一目散に走って帰った。
原っぱってこんなに遠かったの?と思えた。
後から思うに、凄い形相で走っていたに違いない。
帰ってすぐにシャワーで暖めてやって、騒動は一件落着。

田舎に引っ越して3年。
クッキーは今でも雪が大好きで、またしては雪の中を走ろうとする。
懲りないやつだ。
キャンディは雪のかいてある所、人が踏みしめた所を歩こうとする。
時には歩くのをいやがってだっこをせがむ。
原っぱには不自由しない今も、
あの大阪の原っぱでのいろんな事件は、とても懐かしく思い出される。


                                           2001年2月15日



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