忠犬と天才犬


 風邪で寝てしまったときのこと。
主人が仕事に行っても私が寝てるため、クッキーとキャンディはちょっと不安そう。
またしては私のそばに来て様子をうかがう。
ベッドの中に入ってきたり、階下へ降りてみたり
落ち着かないらしい。
それでも2日目になると慣れたのか、当たり前のようにベッドに上ってきて寝ている。
いつものようにクッキーはお布団の中。
キャンディは足元の布団の上。

 ところが私は、 一番ひどいときは寝返りを打っても吐き気がする。
熱のせいか、体が痛い。
咳は出る、ハナは出る。
寒かったり熱かったりする。
とにかく何ともかんともしんどい。

 そんなとき、クッキーとキャンディは「私たちがついてるよ」とばかりに一緒に寝てくれる。
クッキーはぴったりとくっついて。
「クッキー、お腹にくっつかないで。」
うう、吐きそう。
キャンディは足元でしっかりと真ん中でどっしりと。
「キャンディ、ちょっと横へ行って。
体中痛いの、足も痛いの。」
どこへ足を伸ばそうか。

 不思議なもので、そう言いながらそばにいるのが苦にならない。
私が一日中寝てるものだから、2匹ともだんだん態度が大きくなって
私の顔の前にお尻を持ってくる。
キャンディまで布団の中に入ってきて場所の取り合いをする。
横切るときは踏んづけて横切る。
もう、あんた達いったい何なのよ!

 3日目に布団の上で起きあがってることが多くなってくると
さっそくキャンディは遊ぼうとせがむ。
ロープをくわえてとなりの部屋から私を見てる。
「ロープで遊ぶの?こっちへ持っておいで。」
キャンディはロープをくわえたまま「うぅ〜。」と怒っている。
こっちへ持っておいで、遊ぼ。
キャンディは持ってこない。
隣の部屋から近づこうとはせず怒っている。
お母さん起きてこっちの部屋で遊ぼうよと言ってるみたい。
多分そうなのだろう。
いつもなら私の手まで持ってくる。
私がそのロープを取ろうとすると
キャンディは口と手で、取らせないぞと抵抗する。
キャンディはその遊びが大好きだ。

ロープの他にはお馬さんがある。
息子がUFOキャッチャーで取ってきた「びわはやひで」とか言う名前が付いていたお馬さん。
ポッキーちゃんもある。
これもUFOキャッチャーの戦利品の犬のぬいぐるみ。
骨もある。
「骨」と言えば骨を持ってくる。
「ポッキーちゃん」と言えばポッキーちゃんを持ってくる。
もしかしてこの子は天才犬?

 クッキーはそんな私たちを横目で見ながらやっぱり寝てる。
そう言えばクッキーほどの忠犬はいないんじゃないかと思ったことがあった。
あのときはまだキャンディはいなかったなぁ。
私が急病で入院したときのこと。
お医者さんが「念のため、今日一晩入院した方がいいでしょう。」と。
次の日には帰れる予定だった。
主人や息子は何とかするだろうが
どうにもクッキーのことが気になってならない。
それなのに次の日にも帰れない。
「先生、もう大丈夫です、帰してください。」
先生は「休養のつもりでのんびりした方がいいでしょう。」
いえいえ、私はのんびりしたくない、早く家に帰りたい。

 毎日のように家に電話をする。
そう言えば、息子は夏休みだった。
「お母さん、もう大丈夫なんだったら早く帰ってきて、クッキーがかわいそうや。」
何とクッキーは
私が帰ってこないものだから、玄関を離れないと言うのだ。
「お母さん、クッキーが寝ないんや。玄関でずっと座ってる。」
「え〜〜っ!?」
「かわいそうやから、僕が一緒に玄関にいてやってる。
タオルケット持ってきて、僕が玄関で寝てる。」
息子もかわいい。

 私は毎日のように先生に帰して貰うようお願いした。
毎日毎日。
何ともイヤな患者。
先生のお許しが出たのは8日目。
私は飛んで帰った。
鍵を持ってなかったのでピンポーンと。
クッキーが吠えた。
チャイムが鳴るといつも吠える。
「誰か来た、悪いやつだったら許さないぞ。」と。
息子が玄関を開けてくれる。
クッキーは、私に吠えかかる。
「クッキー、お母さんよ、ただいま。」
クッキーは、あんなに待ってたお母さんに吠えてしまった、としっぽを落としてる。
ずっと気を張ってたんだんね。
抱きしめて撫でてやると、腕の中で思いっきり体を振っている。
体中で喜んでる。

こんな忠犬いないよね。
あれで、足音で私がわかるようならね。


                                           2001年2月16日



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