立山道中記

ん?はや起きたん?
「凄い景色やゾ。」
旦那が待ってましたとばかりにカーテンを開ける。
眠い目で外を見る。

ええ〜〜〜っ!!!
うわ〜〜〜〜っ!!!
立山!
はっきり、立山。
これが立山!!
こんなええ景色の部屋やったん?
「何時何時?」
「4時半。」
「早いなぁ。」
「ああ、もっと寝とったらええ
ちょっと散策に行って来るわ。」
「行ってらっしゃい。」

旦那が部屋を出てから5〜6分。
そんなもん、寝てられるわけないやん。
飛び起きた。
急げ〜。
窓の外を見ると
旦那がみくりが池の方へ歩いてるのが見える。
大急ぎで身支度を整え部屋を出る。
ホテルはし〜んとしてる。
まだみんな寝てるんだ。
あたりまえか〜。

静かに、でも急いで
廊下を通り抜け
ロビーの前を通り抜け
階段に。
一人だとなんだか不気味。

屋上に出ると
ご来光を写そうと
カメラをセットしている人に出会った。
「この分だときれいに見えそうですね。」
と声を掛けて
先を急ぐ。

心配したほどもなく
みくりが池の前のあたりに
旦那の姿発見。
こっちに気づくかな。
小さな声で「お〜〜い」と呼んでみる。
無理だよね。
でも偶然か
旦那が振り向いた。
大きく手を振る。
すぐそこに見えても
そこまでがなかなか。

やっとの思いでたどり着くと
「じっとしてられんかったんか?」
と笑う。
「ご来光、一緒に見たかったもん。」

「頂上って、すぐそこに見えるね。」
あと558メートルだったかな。
「私でも登れるかもやね。」
「まあ10日は掛かるかなぁ。」
あの辺で一泊
2泊目は途中の山小屋まで。
酸素ボンベ100本くらい背負っていかないとね。
でも背負うだけで疲れるから
5〜6メートルおきに一本
置いといて貰ったらいいわ。

そこに山があるから
その言葉の意味が
ようやくわかったような気がする。
ホントに頂上に立ってみたいと思った。

「ホーホケキョ」
「あ、うぐいす!」
「ホーホケキョ」
「あ、こだましてる。」
「あっちにも一匹いるんやろ。」
「ええ?こだまやろ?」
「ホーホケキョ」
「ホーホケキョ」
「ほら、こだまやわ。」
「ホーホケキョ」
「・・・」
「ホーホケキョ」
あれ?
今の、間隔がちょっと長かったよね。
やっぱりもう一匹いるのかな。
何度も何度も鳴いて
何度も何度も応えてるんだけど、
結局はどっち?
多分もう一匹が正解。
それにしても立山と言うところは
ウグイスまでも上手に
仕込んである。

もうそろそろ朝日
登るよね。
あの辺から登るのかな。
だいぶ明るくなってきたものね。
でも寒いね〜。

剣岳もはっきり見える。
剣の形に見える!
でも刃が欠けてるね。

まだかなぁ。
「待ってるとなかなかだね。」
あ、反対側の山に
朝日が当たってる。
あそこへ行って見たらよかったんだ。
立山の影が
少しずつ小さくなって
ホテルに朝日が当たる。
なんだ、ホテルの窓から見てたら
もっと早くご来光が拝めたんだ。(笑)

もうすぐ、もうすぐ。
「あ、見えた!
うう〜〜、きれ〜い!!」
写真、写真。
朝日をパチリ。
「撮ってあげましょう。」
近くで同じように見ていた男の人が
声を掛けてくださる。
私たちは二人並んで。
パチリ。
「ありがとうございます。
一枚撮りましょうか?」
「いえ、頭の中に焼き付けて帰りますから。」
おお〜〜お
顔と似合ってないよ。
と口には出さなかった。

「よかったね、見えて。」
冷たくなった手をさすりながら
ホテルへと帰った。

朝食も済ませて
ロビーへ集合。
すっかり顔見知りになった
ツアーの方たちとおしゃべり。
「雷鳥を見た人がいるそうや。」
「ええ、私たちも見ました。」
「え?ホントに?」
「ええ、一匹だけでしたが
はい松の中でじっとしてましたよ。」
「作り物じゃないの?」
「いえいえ、首は動かしてましたから。」
他の方たちも口を出す。
「昨日のカモシカといい、雷鳥といい
あまりにもできすぎてる。」
「電気仕掛けじゃないか?」
「いや、カモシカはコードが見えんかった。
あれは飼い慣らしてあるんや。
お客さんが通ったら
振り向くように調教してあるんやろ。」
口々に好き勝手言って
みんなで笑う。

まだ時間がある。
「ねえ、もう一度立山見てこようよ。」
「でも、荷物が。」
旦那がそう言うと
添乗員さんが
「見てますから、行ってきてください。」
「じゃ、お願いします。」
二人でもう一度屋上へ。
朝日もすっかり高くなって
早朝の景色とはまた
少し違った立山。
きっとまた来るから。

立山に手を振って
またロビーへ。
「ありがとうございました。」
添乗員さんは笑顔で
「いえいえ。」

「ご来光バスの方はいかがでした?」
添乗員さんに尋ねると
「ああ〜、行かなかったんですよ。
一度、目は覚めたんですがね〜。
また寝てしまって。」
「そうですか。
私たちはここで見ました。
昨夜、あんまりきれいな星空だったので
きっと明日のご来光も
きれいだろうなって話してたんです。」
「え?星がでてたんですか?」
「はい、天の川もきれいで
白鳥座がはっきりわかりました。」
「ええ〜〜〜〜っ
うわ〜〜〜〜っ
見たかったなぁ、星。」
「ホントにきれいでしたよ。」
「ああ〜〜〜っ、見たかったなぁ。
一度起きたのになぁ。」
何度も何度も悔しがる添乗員さんを
何度も何度も羨ましがらせて
ちょっといい気分。(笑)

(つづく)


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